サンタ、早くも苦労す

アルバイトに出向くと、スタッフが全員サンタクロースの衣装を模したエプロンを着用していた。アレ?と奇妙に思い腕時計を見ると、11月17日。

クリスマス商材こそ展開しているものの、流石に、まだ流石に、サンタクロースに化身するのは気が早いのではないか?

気恥ずかしさと釈然としない感情でもやもやしながら私は渋々エプロンを着用した。同じくサンタエプロンを着けたパートのおばちゃん曰く、「店長がどうしてもやると言って聞かない」らしい。おばちゃんたちも徒党を組んで反駁したようなのだが、頑として意見を変えないそうだ。何がそこまで店長を駆り立てるのか知らないが、こんなしょうもないことで信頼を失墜させるなんてアホらしいと思う。

若い女の子は良いけどねェ、私みたいないい歳した女の子に、こんな時期から着せることないのにね。鬼畜の所業だよっ」とおばちゃんはなおも憤慨していた。確かにその通りだし、「私みたいないい歳した男の子に着せるものでもないよなァ」とも改めて思った。

このエプロン、着用者を辱めるだけでなく、実に邪魔くさい。何せ、普段から着けているエプロンの上から、この可愛らしいボンボンの付いたエプロンをかけるのだから、暑苦しいし、鬱陶しいし、元のエプロンのポケットに突っ込んである道具が取り出しづらい。最悪だ。これがあと一ヶ月以上も続くのを考えると、閉口せざるを得ない。

そしてこういうタイミングに限って、顔見知りが来店する。遠くから察するに、幼稚園の頃からの幼馴染だった。幸い、向こうは自分に気がついていない。

私は幼馴染にこの醜態を視認されないよう、売り場を手直ししながらそそくさと逃げ回った。レジ担当でなかったのがまだ良かった。20分ほどたむろして会計を済ませると、何事もなく幼馴染は退店した。九死に一生を得たが、やはりこれが一ヶ月以上も続くと考えると胃が痛い。

店長の気が変わるのを祈っています。

 

そういえば常連の、いつもブルーのジャンパーを着込んで来るお年寄りのお客様に、「そういや君は、もうすぐ卒業だっけか?」と藪から棒に訊かれた。自分の学年、把握してくれていたのかと感動しながら、ええまあ、と答えると、「そうか。3年…4年間か。よく頑張ったな」と。

まだ、あと数ヶ月残っているにせよ、凄く心に沁みた一言でした。ずっと見てくれていたのだなァ。嬉しいですとても。

3月中旬くらいまで、ラストスパート、気合い入れて頑張ろう。