入魂の画展
池袋で開催されている藤田和日郎の原画展に行った。
うしおととら、からくりサーカス、月光条例、双亡亭壊すべしと、ひとつひとつ軌跡を辿りながら絵を鑑賞。
その迫力たるや。
力強い線と大胆な色遣い、臨場感のある構図、それに、生き生きとしたキャラクターの表情。ここまで胸を打たれる絵を描く漫画家を私は他に知らない。
中でも真骨頂といえば、喜怒哀楽といった激情の描写なのではないかと思う。キャラクターの笑顔、涙、怒りなんかが絵の中から飛び出して、見た者を鷲掴みにするような、正に「魂」の込められたシーンの数々。1ページだけ切り取って読んでもぐっと込み上げてくるものがある。
それから本当にすげぇなぁと思うのが、白黒でも映えるようなガッツリした線を引くのに、それをギラギラした塗りでもって絶妙なバランスに昇華させていることだ。ホショクだとかドウケイショクだとかよくわからないが、無茶苦茶なようでまとまった配色、見習いたいと思う。
絵もさることながら、ストーリーも良い。説明するのも野暮なので省くが、からくりサーカスなんかはたったワンシーン展示されているだけでもその背景、ストーリー展開を思い出して泣きそうになる。読んだ人はきっとみんなそうだと思う。
私にとって『うしおととら』と『からくりサーカス』は、生来もっとも泣かされたマンガでした。その二作品に限ったことではないが、藤田先生のマンガは「これぞマンガだ」と身をもって教えてくれるような迫力と魅力を感じる。全部ひっくるめた「マンガらしさ」を感じる。初めて読んだ時には、松本大洋の『ピンポン』を読んだ以来の衝撃を受けたっけなぁ。
比べるのもおこがましいが、自分の絵は何て小手先の産物なのだと反省した。一筆入魂の肝要さ、とくと味わいました。
うまくまとまらなかったけれども、藤田先生の魅力を再確認できる良い展示だった。
うしおととら、じっくり読み返します。