しゃり巻
祖母宅の居間に、私の大好物「海苔巻きあられ」が放ってあったので食べた。
本来ならば海苔のぱりっとした食感の後、あられのカリッとした食感がやってきて、醤油の香ばしい匂いが鼻を抜けていくはずである。しかし口に入れたそれは、何だかいつもと様子が違っていた。
まず、歯触りがモニュモニュしている。ぱりでもカリでもなく、モニュなのである。
ンッ?と一瞬困惑したのち、もうひと噛みすると、今度はザクっと音がした。モニュがザクに変化し、またモニュ、ザク、ザク、モニュ、といった感じで移り変わる。しけっているというわけでもない。もしかするとこのあられは腐りかけていて、半ば液化した状態なのかもしれない(食物は腐ると液化するという無根拠の観念が私にはある)。
恐怖して吐き出すべきか否か迷っていると、不意にまろやかなチーズの香りが鼻腔を駆け抜けた。これはいよいよ本格的にやばいと直感的に思い(食物は腐ると乳製品じみた臭気を発するという無根拠の観念が私にはある)、ティッシュを構え吐き出そうとすると、祖母が言った。
「しゃり巻き美味しい?」
その言葉が私の愚行を止めた。しゃり巻き?と聞き返すと同時に、私はそれを飲み込んだ。
どうやらコレは、そういうお菓子のようだった。冷静になってみると、口の中にはなんとも上品なコクが広がっている。
もうひとつ口に放り込み、吟味する。そこでようやく食感の正体が解った。モニュモニュは練られたチーズの、ザクザクは細かく砕かれたあられの奏でる音だったのだ。
いやはや、無害なものと知って味わうと本当に美味しい。クセになる。おつまみ系特有の中毒性だ。老舗のお菓子か何かなんだろうか。
しゃり巻き。いつかどこかで見かけたら購入しよう。そう心に決めた一日でした。
書店でのアルバイト中、小林賢太郎訳の『オレ、カエルやめるや』という絵本をお求めの婦人がいらっしゃった。
うちにもあの本あったのかぁやられたなぁと思うと同時に、読み聞かせられた子供はなんて幸せ者だろうと心の底から羨んだ。
最近は創作意欲減退気味なので、久しぶりにラーメンズのコントでも観ようかしらね。
そうしよう。