穴空きな日々-1

もうだめかもしれない。私は二度とこの美しく広大な世界を走り回ることはできないのかもしれない。友人とかけっこなんかをして遊ぶこともできないし、ちょっと急ごうと駆足することもできないし、草原でその体躯をしならせて解放感を味わうこともできないのだ、きっと。

いやさすがにそんなことあるわけないけれど、酷くヤワな身体になったことは確かなのです。

 

先日のことです。気分が晴れないので少しランニングでもしようと外に出て、10分ほど走りました。するとどうでしょう。右胸から脇の下にかけてズキズキと痛みます。息を吸うと、肺がギュッとします。運動不足だと脇腹が痛くなることがままありますが、それとはまた違った種の鈍痛なのです。

もうひとつ例をあげましょう。今日のことです。「あ、信号が変わってしまうよっ」とちょっと小走りして一息つくと、今度は左胸から脇の下にかけてズキズキと痛み出しました。我慢できるレベルではありますが、やはり変な痛み方です。妙な気分に侵されウンウン唸っていると、そのうち私はあっ、と声をあげました。

思い出したのです。数ヶ月前のことを。

あれはサークル合宿の前日。バイト中の出来事でした。いつも通り気ままに売り場の手直しをしていると、突然左胸とその周辺が凝り固まったような感覚に襲われました。別段痛いわけでもなく、これが肩凝りというやつか? と呑気なことを考えていました。何せ私は肩凝りというもの経験せず生きてきた苦労知らずのすっとこどっこいなので、ちょっとした感動すら覚えたほどです。「とうとう私も大人になれたんだなぁまいったね」といった具合に。しかし数分後にはそんな余裕はすっかりなくなっていました。

もうむちゃくちゃに痛むのです。胸が。というか肺が。

刺激を与えぬようにのそのそと動いても無意味。息を吸っても痛いばかりか朦朧とする。血液、酸素がうまく体を循環していないという感覚。いつの間にか、もう平気な顔で接客できないほどになっていました。

そこで渋々、マネージャーに泣き言を言って早引きさせてもらうことに決めました。もう歩くことすらままならないという様子でしたので、救急車呼ぶかい、どうするかいとマネージャー様は気を遣って忠告してくれました。しかし私は首を横に振りました。家は割と近くにあったので大丈夫だろうと思いましたし、何より救急車が怖かったのです。それに乗った瞬間に重病人認定されるみたいで不服だったのです。あくまで私は健康体であると、いつまでもしょうもない意地を張っていました。

そんなこんなでその日は帰途に就いたわけです。しかし、問題はその後でした。

 

面倒になったのでまたそのうち続きを書きます。